中国税制コーナー:ユニラテラルAPAに簡易プロセスの導入④

これまで三回に亘って本年9月1日より適用開始の「ユニラテラルAPAの簡易プロセスの導入」規定である中国国家税務総局公告2021年第24号(以下「24号」といいます。)につき、その内容及び筆者自身の理解をご紹介しました。

今回は、①中国ユニラテラルAPAの現状、②24号のパイロットプロジェクトの実績及び③想定される24号の申出法人、及び④24号の活用について、書きたいと思います。

① 中国ユニラテラルAPAの現状
中国では、APA制度は税収の確実性を担保する重要なツールであると認識されているのみではなく、多国籍企業が安心して中国でのビジネスを継続するための環境整備策の一環としても考えられています。
そのような背景もあり、近年ユニラテラルAPAも増加傾向にあり、2019年度のユニラテラルAPA締結数は12に上って、ここ10年以来の最高水準となったようです。
ただ、APAの締結に必要な各プロセスは難易度が高く、人的リソースも限られていることもあり、申出から締結まで通常1年~3年以上の時間が掛かるものとされています。

② 24号のパイロットプロジェクトの実績
24号の公表に先立って深圳でパイロットプロジェクトが実施されました。
パイロットプロジェクトとされた2社と深圳税務当局は、ユニラテラルAPAを適用するための従来の6つのプロセスを3つに短縮させた上、わずか6ヶ月以内に第2プロセスである協議・締結を終えることができたようです。
今後24号の適用開始によって、第1プロセスである申請・評価の所要時間90日に第2プロセスの6ヶ月を加算して考えれば、最短で9ヶ月でユニラテラルAPAの締結が実現可能となります。

③ 想定される24号の申出法人
・国外関連取引金額が大きく、単一機能若しくは機能リスクが限定されている中国関連者
・利益水準が大きく左右される技術使用料や商標権使用料等のロイヤリティーの支払に係る国外関連取引に該当する無形資産取引を行う中国関連者
・過去特別納税調査を受けたことのある中国関連者
・過去ユニラテラルAPA若しくはバイラテラルAPAの実績があったものの、更新されておらず、かつ利益変動幅が大きくなった中国関連者
・バイラテラルAPAの締結に不確実性がある中国関連者

 

④ 24号の活用
理論上ユニラテラルAPAは、バイラテラルAPAと多国間APAと比較して、移転価格課税による二重課税の解消という観点では、必ずしもベストチョイスではありません。しかし、ユニラテラルAPAに簡易プロセスが導入されたこの24号は、ユニラテラルAPAのもつ、国家間の相互協議が必要とされない、他のAPAのない特徴に加え、申出から合意までの手順・所要時間を大幅に圧縮させることによって、ユニラテラルAPAの締結に関するタイムフレームが明確になり、納税者における税務リスクの管理、税務コストの管理の確実性に大きく寄与できると考えられます。
また、多国籍企業は親主導による移転価格ポリシーに基づく文書化システムをしっかり構築したうえ、事業活動拠点の所在国の移転価格税制及びその執行実務を分析し、費用対効果という観点でより適正なAPAの種類を選択すべきと思います。
新型コロナウィルス感染症の長期化に伴って世界情勢の見通しもより一層不透明を呈しています。各国経済も内向きになりつつある傾向にある中で、グローバルに事業を展開している多国籍企業は、より税務リスクを見据え、税務コンプライアンス遵守コストの管理に確実性を追求するために、事業拠点によってはユニラテラルAPAもベストチョイスになりうるのではないでしょうか。

以上四回連載で本年9月1日より適用開始の中国ユニラテラルAPAに関する新規定の公告24号をご紹介しました。
ご覧頂いた方々に少しでもお役に立てれば幸いです。
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本稿は、個人的理解に基づく解説ですので、実務にご活用いただく際は、必ず下記中国語の原文をご確認頂きますようよろしくお願いいたします。

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zhuying@ozzio.jp

24号及び24号解説文の原文:
http://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n810341/n810825/c101434/c5167276/content.html
http://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n810341/n810760/c5167283/content.html
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2021年08月31日