中国税制コーナー:ユニラテラルAPAに簡易プロセスの導入①

中国国家税務総局は、7月26日付で「ユニラテラルAPAを適用するプロセスの簡素化」を定める国家税務総局公告2021年第24号(以下「24号」といいます。)を公布し、2021年9月1日より適用開始としました。

24号は、BEPS行動計画14の勧告を取り入れた「APA管理等の最適化」を定める国家税務総局公告2016年第64号(以下「64号」といいます。)の内容を基に、一定条件を満たした多国籍企業の中国にある関連者(以下「企業」といいます。)とのユニラテラルAPAに限って、そのプロセスの簡素化を図り、申請からユニラテラルAPAの締結までの時間を大幅短縮させる、64号の特殊規定とも言えます。

64号及び24号でいうユニラテラルAPAは中国の納税者がその将来事業年度に亘って行う関連者間取引(中国では、国内関連者間取引も移転価格税制の適用対象になりますが、24号で言及されている関連者間取引は国外関連取引に限定されるものと思われます。)の価格設定の原則及び計算方法につき、中国税務当局との間で独立企業原則に基づく協議の上達した合意といいます。

移転価格課税に起因する二重課税の解消や国外関連取引を行う各関連者における法的確実性の確保という観点では、バイラテラルAPAや多国間APAが根本的問題の解決に繋がりますが、多国籍企業のビジネスモデル、各拠点の有する事業の特徴及びその所在地国における税務リスクによっては、国家間の相互協議が必須なバイラテラルAPAと多国間APAと比較して、ユニラテラルAPAは特に懸念される所在地国の税務リスクに早めに手当てできるメリットがあります。

新型コロナウィルス感染症の長期化に伴って各国の経済も少しブロック化になりつつあるように見えます。ユニラテラルAPAは、決してベスト選択ではありませんが、親会社主導の文書化の仕組みをしっかり構築されれば、バイラテラルAPAや多国間APAよりは、ユニラテラルAPAは、低コストで、かつ効率よく、多国籍企業グループ全体の税務リスクの軽減に寄与できるツールになるかと思います。

今般は中国APAに関する一般規定である64号に基づき、ユニラテラルAPAのみを対象に簡易プロセスを導入されたのはこの24号です。中国に拠点を有する多国籍企業は今後どのように24号を活用するのかが注目されます。

次回は、24号の内容を少しご紹介したいと思います。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
本ブログの内容は、筆者の個人観点であり、如何なる助言への使用による責任を負いません。
また、本ブログの内容は筆者の著作権に属しており、無断複写(コピー、スキャン、デジタル化など)を固くお断りします。

2021年08月29日